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第6話 「「災厄」vs「盾」「弓」 ROUND1

 

「…おかしいなぁ?」

カリューは城内へ続く道を歩きながらつぶやく。歩くといっても、周りへの警戒は怠らない。

「本拠地だというのに、なぜ兵隊が出てこない…?」

先程カリューは、正面突破で城に乗り込んだ。始めは「もう少し穏便にコソコソ潜入しようかな」などと考えていたのだが、先程倒した「剣」の男が期待はずれといっていいほど弱く、怒りがこみ上げ暴れたくなったのであった。そして門番や守備隊を蹴散らしながら進んでいったところ、すぐに兵隊が出てこなくなったのである。そういうわけで、カリューは広い城の敷地内を一人で歩いていた。とりあえずは正面に見える一番大きな建物の入り口を目指して歩いている。

 建物の入り口にたどり着いても、入り口には誰一人いなかった。

「無用心…というか、不自然だな。」

誰にともなくそう言い放ち、中に入る。やはり中にも誰もいない…と思った矢先、カリューの目に一人の男が映った。その男はにこりと微笑み、カリューのほうに歩み寄る。彼の手には大きめの盾が握られている。

「ようこそ、きれいなお城でしょう、お気に召しましたか?」

男は微笑を崩さずカリューに話しかけてくる。

「…さぁ、どこもこんなもんだろう?」

カリューは男をにらみつけて適当に答え、言葉を続ける。

「あんたもエンペラーズ・アームと見たが、どうだろう?名前は『王の盾』かな?」

「さすがですね、カリュー・ライコネンさん。でも私の名前は『イタリ・ポポキンス』、『盾』は王から頂いた通り名です。」

「へぇ、俺を知ってるのか。やっぱり俺って有名人なのかな~。」

カリューはおどけて言ったが、二本の手は剣の柄にかけ、戦闘体制に入っている。

「カリュー・ライコネンといえば悪名高き冒険者『災厄の男』ということですが、個人的には私が戦争の前線で戦っていた時に噂になっていた『天災傭兵』カリュー・ライコネンのほうが印象深いですね。」

『盾』イタリは相変わらず微笑んでいる。敵が目も前にいるという状況下でその様子には殺気が全く感じられない。しかしカリューの手も相変わらず剣の柄を握っている。振る舞いがこうでも油断はできない男だ、と彼は感じていた。

「そんな通り名は初耳だ。確かに俺は天才だけど、この国の兵隊はダジャレのセンスがねぇなぁ。あと「傭兵」というよりはただのバイトだよ。昔金に困って仕事探してたら、いつのまにか兵隊に雇われちゃってね、それでちょっと金稼いだだけだよ。あん時は同業者からうるさく言われたものだ。『権力の下について自由な冒険者が聞いてあきれる』とかなんとか。まぁそんな理想論ばっかり言ってるバカの話なんか真には受けないけどな、あん時はマジでやばいときだったし…って、どうでもいい話をしちまったな。それよりもかかってこないのか?城内に兵隊がいなくなったから退屈し…」

警戒はしながらもぺらぺらと調子に乗って話していたカリューだったが、そのとき無意識に体が動いた。強い殺気を感じたわけではなかったが、戦士としての勘が働いたというべきか、無意識にステップで横に飛ぶ。一瞬後、後ろから矢が通り過ぎ、『盾』が通り名でもある盾でそれを受け止めた。

「だまし討ちか、なかなかいい作戦だったな。」

カリューはイタリと、後ろから矢を撃った男をちらりと見て剣を抜く。

「まぁ、あなたならよけるだろうと思ってましたよ。だからこそ私はすばやく盾を構えられたのです。なにしろサッバーノさんを倒したくらいですから、それくらいはできるはず。」

「お褒めに預かりまして大変恐縮です、ってか?後ろの男は『弓』かな?」

「そうです、名前は『ホンキーニ・タカタ』頼りになる男です。ちなみにエンペラーズ・アームに任命される前は暗殺部隊のエリートでした。」

「そうかい、…って、おおっと!」

カリューが『弓』からほんの少し目を離していたその時間で、彼は一気に接近し、ナイフをカリュー目掛け投げつけていた。しかしカリューもすぐさま剣で叩き落す。

「『弓』なのにナイフを使うなんていったいどういう了見だ?」

再びおどけて尋ねるカリューの質問に、イタリが答える。

「別に通り名とおりの道具しか使わないわけじゃないです。『槍』だって槍というよりは槍斧を使っていましたし、私も剣を使わないと、相手を倒せませんから。」

そういって、イタリは腰の剣を抜く。盾に隠れて見えなかったが、ちゃんと武器は持っていた。まぁそうだろうとはカリューも思っていたが。

「とにかく、あんたら二人で俺と戦ってくれるのかな?」

「ええ、サッバーノさんを倒すぐらいの腕ならば、私やホンキーニが一対一で戦っても勝てるかどうか分かりませんからね。…あ、ちなみに他の兵隊は引き上げさせました。どうせ無駄死にするだけでしょうし、一緒に戦っても足手まといでしょうからね。」

相変わらず微笑を絶やさず口を動かすイタリに、カリューはすばやく接近し右手の剣を振り下ろしていた。イタリもすばやく反応し、それを盾で受け止める。そこでカリューは動きを止めず、すばやく左に回りこみ、盾の横から左手の剣を突き出…そうとしたが、盾の脇から鋭い剣がすさまじいスピードで突き出された。カリューは何とか動きを止め、そのまま反対方向にステップし離れたが、そこに矢が飛んできた。体をひねりなんとか交わすものの、矢は少し顔を掠める。カリューはわずかに顔を歪めホンキーニのほうを見やる。すでに彼の弓には新たな矢がつがえられていた。

「余所見をしている場合ではないですよ!」

とイタリが叫ぶ。先程の微笑みはすでに消えており、その表情は『剣』よりも鋭い表情だった。盾を正面に構え、突っ込んでくる。カリューはその突進を二本の剣で受け止める、イタリはすばやく盾をひき、同時に剣を振り下ろす。カリューは剣で受け止めようと一瞬思ったが、すぐに思い直し斜め前に飛ぶ。イタリが剣を振ると同時にホンキーニが矢を放っていたのだ。それを予感しての判断だった。かわすついでに剣をイタリに向けて突き出すが、当然のようにかわされる。カリューはそのまますばやく間合いを取る。

「ナイスコンビネーションだ。なかなかやるな。」

カリューは今度は二人から目を離さずに言う。先程矢が掠めた傷からは血が出てはいるが、たいした傷ではない。

「なかなか…ですか。とても強い、と言ってもらいたかったですね。」

イタリが答える。先程の鋭い表情は、微笑みに戻っている。ホンキーニはイタリとは少し離れたところでカリューに狙いを定め、黙っている。

「さて、どうします。我々に勝てそうですか?」

つづけて言葉を発したイタリの問いに、カリューは即答する。

「勝てるさ。」

カリューの顔には、いつもの笑顔が浮かんでいる、しかし、すぐにその顔は苦痛にゆがんだものとなった。カリューはそのまま片膝をつく。

「…そうか、暗殺部隊出身とかいってたな。ってことはやっぱり…」

「当然毒くらいは塗ってある。」

それまで一言もしゃべらなかったホンキーニが口を開いた、そしてイタリがそれに続く。

「まぁ冒険者たるもの解毒剤くらいは持っているでしょうが、それを飲ませる猶予などはもちろん与えません。どうですか、あなたはとても不利です、それでも勝てると?」

イタリが微笑みながら、それでいてどこか勝気な表情でカリューを見下ろしている。カリューは毒で顔をゆがめながらも笑顔を作り、そしてこう答えた。

「もちろん、俺は勝てるさ。」

[to be continued]


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