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第三話 「災厄」vs「槍」

 

 咆哮とともに、巨大な槍が振り下ろされる。刃は地面に突き刺さり、土をえぐる。土埃を豪快に巻き上げながらサッバーノはすぐさま槍を構えなおし、カリューに踏み込む隙を与えない。

「…なるほど、なかなかの運動能力だ。」

「そりゃ、どうも。そういうおっさんもやるじゃないの。さっきからおっさんの間合いに入ったら、おっそろしいスピードで槍が飛んでくるからなぁ。それ以上入り込めやしねぇ。剣で受け止めたら、まず間違いなくへし折られるだろうしな。」

「ふむ、判断も冷静だ。戦士としてこれほど優秀な素質を持つものもそうはいないが…。」

「だろう?なんたって俺は天才だからな。」

「貴様はここで殺しておかなければいかん!」

今度はサッバーノから攻撃を繰り出す。巨大な槍をまるでムチのように扱い、次々とカリューを狙い振りまわす。これまでは軽々かわしてきたが、さすがのカリューもこのすさまじい連続攻撃をすべては避けきれず、やむなく槍を剣二本で受け止める。その瞬間、甲高い音が響き渡る。予想通り二本の剣が折れた。受け止めた際に生まれた一瞬の静止時間を使い、カリューはなんとか身をひねり直撃を免れ、すばやく距離を取るが、態勢を立て直したその時わき腹に痛みが走る。槍の刃はカリューの胴をかすめていたのだ。カリューの顔から笑みが消える。

「…ちぃ、この程度の攻撃で…。」

「直撃したと思ったがな。だが、武器も失った。もう終わりだな、災厄の男!」

サッバーノが槍を構えなおし、間髪入れず再びカリューに向かって駆け出す。あれほどのすさまじい連撃を繰り出した直後にもかかわらず、息一つ乱れていない。

「終わりだと?」

カリューは笑う。しかしそれはさっきまでの笑みとは違い、どこか不気味なものを感じる。

「ボロボロの剣をへし折ったぐらいでいい気になんなよ、おっさん。」

カリューは後方へ駆ける。その先には兵士達の屍骸が転がっている。そこには兵士達が生前使っていた剣や槍ももちろん散乱していた。

「悪あがきを!剣を拾い上げる隙に、私の槍がお前を貫くぞ!」

カリューは一番近くに落ちていた剣に向かい、体をかがめる。しかし、サッバーノもすばやく近づく。かがんだカリュー目掛け、槍を突き出す。ついに仕留めた、サッバーノはそう思った。しかし、槍が突き出た場所にはカリューの体はない。

「惜しかったなぁ、こっちだ!」

「何!馬鹿な!」

何が起こったか、サッバーノはすぐに理解した。カリューは剣を拾い上げる瞬間ねらわれることを最初から読んでいた。だからかがんで剣を拾い上げるふりをし、すぐさま横っ飛びでかわしたのだと。彼はカリューの飛んだ方向を見ると、すでに剣を二本、拾い上げていた。

「敵ながらすばらしい判断だった。それに、その傷でそこまで動けるとはな…。」

裏をかかれたにもかかわらず、サッバーノに動揺した様子は無い。

「油断したかな?確かに傷は痛むけど、そんなもんで冒険者はつとまらねぇんだよ。」

カリューは拾ったばかりの剣を構える。傷の痛みなどまるで無いかのようだ。

「調子に乗るな、お前が劣勢なのには変わりは無いぞ。」

サッバーノも槍を構え、カリューと向かい合う。カリューは動じることなく、そんな彼をにらみ返す。

「まだ俺が劣勢と決まったわけじゃないぞ?もちろん俺は逆境にも強いけどな。」

相手に向かい駆け出し、そのまま突っ込む。顔には笑みが浮かんでいる。

「馬鹿げた事を!何度やっても同じだ、お前の間合いには入れさせん!」

カリューを巨大な刃が襲う。カリューは一振り目をすばやい動きでかわし、再び突進。サッバーノも再び連続で槍を振り、カリューを近づけない。

「何度やっても同じだ!今度こそ仕留めてやる!ぬおおぉぉぉ!!!

大きく叫びながら、カリューめがけ槍を振り下ろす。その瞬間、カリューはにやりと笑った。ほぼ同時に、地面に巨大な刃が突き刺さる。カリューは槍を剣で受け止めるのではなく、受け流したのだ。そして受け流すと同時に一気に踏み込み、カリューの間合いに入り込むことに成功していた。

「調子に乗ってたのはおっさんのほうだったな!とっくに動きを見切ってたんだよ!」

二本の剣が舞う。カリューは確実に鎧の隙間をねらい、斬る。サッバーノはうめき声を上げて片膝をついた。カリューはさらにすばやく剣を突き出し、追い討ちをかける。

「終わりだな!」

「うおおおおおぉぉぉぉ!!!

そこへ怒号とともに槍の柄が突き出された。傷を負いながらも必死で繰り出す、サッバーノのまさに執念の反撃だった。しかしその執念も実らず、カリューのすばやい動きによりかわされてしまった。

「っと、残念だったなぁ。」

カリューは一度は止めた剣を彼の両手に振り下ろす。血が飛び散り、巨大な槍が音を立てて地面に落ちた。

「最後の一撃くらい予想してたさ。これでもうさすがにもう槍を振り回せないだろう?」

「勘もいい、か…恐れ入った…。『王の槍』たる私を破るとは…噂以上だったな、災厄の男。」

「なんてったって天才だからな。まぁ、おっさんもよくやったよ。」

カリューは剣を構えなおしながら答える。その様子を見たサッバーノは堂々と彼を見る。おびえてはいないようだが、表情はどこか険しい。

「さっさと殺せ災厄の男。俺は死を恐れはせん。貴様は戦った相手の命は必ず奪うのだろう?」

カリューは笑みを浮かべ、サッバーノに近づく。

「なかなかいい戦いだったな、楽しかったぜ。あばよ!

剣が振り下ろされる。血飛沫をあげ、サッバーノの首が地面に落ちた。

 

「しかし予想以上に疲れたな、一撃もらっちまったし。空腹と疲労のハンデがあるとはいえ、ここまでの強敵は久しぶりだったな…。」

カリューは剣を鞘に収める…が、鞘に納まらない。そういえば一度剣を折られたな、と苦笑いを浮かべる。

「…新手もいないようだし、少し休みてぇな。」

カリューは再び歩き出す。周りはすっかり静かになっていた。

[to be continued…]


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