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第二話   荒れ狂う災厄

 

 次々に兵士が突進してゆく。しかし、その目標である侵入者カリューはものともしない。二本の剣を振り回し、迫り来る兵士達を次々と切り捨て、殺していく。殺すことには何のためらいも無い。既に部隊の4分の3は始末していた。

「どうしたぁ?死にたい奴からかかってこいよ!」

仲間のほとんどを殺され恐怖におびえる兵士に向かい、カリューは威嚇する。顔には相変わらず笑みが浮かぶが、そのプレッシャーは強力だ。その迫力に押され、兵士達は動きを止める。

「どうした、腰でも抜けたか?ボサッとしてると、こっちから行っちまうぞぉ!」

今度はカリューが兵士達に突進、しかし兵士達に立ち向かう覇気はもう無い、悲鳴を上げるものもいれば、逃げ出そうとするものもいた。しかしカリューはそんな兵士も一人残らず斬り捨てる。気づけばあたり一面、どす黒い血の海に変わり果ててしまっていた。

「ん~、思ったよりも歯ごたえがないなぁ。」

カリューは剣にべっとりとついた血を払い、一息つく。

「これで終わりじゃないだろうが、新手が来るまで…」

そうつぶやいたとき、周りの物陰から一斉に兵の群れが現れる。どうやらそこで屍に成り果てている部隊との交戦中に、ひっそりと取り囲まれたらしい。

「完全に包囲したぞ、侵入者め!さぁ、おとなしく降伏しろ」

周りからいくつもの剣、槍、弓がカリューに向けられる。しかしカリューは動じない。

「こいつら殺してるうちにこっそりと包囲していたか…。うん、いい作戦だよ。いいんだけどね、俺を降伏させるにはザコをいくら寄せ集めても意味が無えな。」

「減らず口を…射手、矢を放て!全軍、突撃!捕らえろっ!」

矢が放たれ、何本もの矢がカリュー目掛け一直線に飛ぶ。しかしカリューは滑らかな動きでそれをかわし、かわしきれない分は二本の剣ではじく。まるで矢の通過点が分かっていたかのように。

「天才の俺には弓は通用しねぇんだよ!」

カリューは手にした二本の剣を構え、四方から迫り来る兵士達を迎え撃つ。

 

 

「侵入者の件はどうなった?」

屈強な男が部下に尋ねる。この男が兵士団長であり、この基地を取り仕切る司令官でもある、サッバーノ=ロカテッリである。少し前に進入者が現れたと聞き、すぐに兵を向かわせたのも彼である。

「ただいま、C地区にて第2、3白兵隊、第5弓兵隊と交戦中とのことです。そして、すでに第1白兵隊は全滅したと…。」

「全滅!?進入者は一人なのだろう?」

驚きを隠せなかった。この基地の部隊は当然本国のそれに比べたら戦力は劣るが、決して弱い兵士が配属されているわけではないし、数も多くは無いがたった一人に全滅させられるほどの人数でもない。にわかには信じられない話だ。

「私も信じられません、事実です。…侵入者は流れ者のようで、二刀流の使い手だとか」

「二刀流の流れ者…か。」

サッバーノは脇においてある巨大な槍をつかむ。彼の槍は穂先に斧もついているハルバードと呼ばれるものだが、大きさは一般のものよりかなり大きい。

「司令官!?まさか直々に…?」

「あぁ、部下達の仇をとりに行く。私一人で十分だ。第4白兵隊、第6弓兵隊は引き続き奴隷の見張りだ。」

「一人ですか?いくら『王の槍』といえど、一部隊を全滅させるような奴に…」

「十分だ」

今までよりも低い声で、男は言う。

「し、失礼しました!」

「…それと、第6特別部隊を念のため召集しておけ。万一私が倒れた場合、ウェア隊長を中心に残存部隊をまとめ本国に撤退するよう伝えておけ。」

部下には顔を向けず、サッバーノは部屋を出た。

 

 

あたり一面に死骸が大量に転がり、血の臭いが立ち込めていた。その光景はまるで地獄のようだ。

「ふぅ、思ったより時間がかかったなぁ。さすがに疲れたぜ。」

カリューはたった一人で兵隊を全滅させていた。しかし大部隊との交戦も終盤になってくると、動きが全体的に鈍っているなと感じていた。まぁ一日何も食べずに歩き回っていた体では無理も無い。いくらカリューが強いといえども、疲れや空腹には勝てないのだ。

「いい加減に飯にありつきたいもんだが…ん?」

前方から背の高い屈強な男が一人、巨大な槍を携えてこちらへ向かってくる。見るからに只者ではなさそうだ。

「お、なかなか骨のありそうなのが出てきたなぁ」

サッバーノはカリューの元にたどり着くや否や、カリューを見るより先に奥の地獄を見た。鋭い目つきが、さらに鋭くなる。

「貴様か、侵入者とやらは。」

落ち着いているものの、その言葉にはどこからか怒りがにじみ出ているのをカリューは感じ取った。

「よくもここまで私の部下をやってくれたな…」

「『私の部下』ってことは、あんたが兵士団長さんかな?部下達は立派な殉職を遂げたぜ。なんせ無謀とわかってて天才の俺に刃向かったんだから。」 

「ここまで酷い真似を…。何も皆殺しにする理由は無かったと思うが?」

「あるさ。」

カリューは顔は笑みのまま、男をじっと睨む。

「戦うときはお互いの命を賭けないと、戦いのスリルが減っちまうだろう?」

「何だと!?貴様は殺し合いが楽しいと言うのか!」

男の声が自然と大きくなる。

「ああ、命を賭ける瞬間ってのは、なによりもスリリングですばらしいと思うぞ。」

「…やはり貴様のような外道はここで殺すべきのようだ、災厄の男!!!」

「ほぉ、俺はあんたを知らないが、あんたは俺を知ってるのか。やっぱ俺って超有名なんだぁ~。」

カリューは悪名高き冒険者。彼と戦えば、必ずその二本の剣の餌食となり生き残ることは出来ない、そう全国各地に知れ渡っている。そしてその強さ、非道さ故に、いつの間にか「災厄の男」と呼ばれるようになった。

「ほざくのも今のうちだ。お前のその剣では、このハルバードを受け止めることはできん。お前に勝機は無い!サッバーノ=ロカテッリ、参る!」

サッバーノは彼の背丈の2倍以上はあるハルバードを軽々振り上げ、構える。確かに彼のハルバードにかかれば、カリューの持っている剣など一撃で破壊されるだろう。

「さぁ、それはどうかな?なんせ俺は、人の手ではどうすることも出来ない災厄なんだからなぁ!」

カリューも二本の剣を構えなおす、その様はどこか楽しそうであった…。

[to be continued…]


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